2016年9月16日金曜日

オンライン・ファンド☓養鶏(by日経ビジネスオンライン)

某大学の教授と近い考え方! 感動記事!

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オープンソースな養鶏は可能か

遺伝子を企業支配から解放する

2014年10月3日(金)

 みんなが大好きな鶏肉。その大半は、大量生産型の養鶏によって生産されている。何万羽という鶏が、鶏舎にぎゅうぎゅう詰めにされて育ち、孵化後わずか6週間で丸々と太らされ、出荷される。一方、オーガニックな養鶏というのもある。餌に混ぜ物など入っておらず、鶏たちは草の上を歩き、過密生産の鶏たちに比べて長生きもさせてもらえる。
 しかし、重要な共通点が一つある。どちらの鶏も、出発点は孵卵場で産卵された卵であること。そして元をたどると、孵卵場で種鶏となっているのはたいてい、世界に数社しかない育種会社のどれかが保有している交配種であることだ。
イートウェル・ファームを営むナイジェル・ウォーカーは、オーガニック養鶏場でブラック・オーストラロープ種という伝統品種の飼育を始めようとしている。 (写真=Anna Hesser/Creative Commons)

大規模育種・孵卵ビジネスから脱却

 「ここにいるのは巨大企業からヒナを購入して育てた鶏たちです。残念ながら今は、自分の農場で飼育している鶏の遺伝子がどこから来たのかさえ、私にはわかりません」 と話すのは、米国カリフォルニア州でイートウェル・ファームを営むナイジェル・ウォーカーだ。はたから見れば、ウォーカーの農場はとてもちゃんとした養鶏を行っている。ただし、飼育している茶色い羽の鶏たちが年齢を重ねるごとに、彼は孵卵場から新しいヒナを購入する必要があるのだ。
 そうした育種・孵卵ビジネスから一線を画する方法がある。在来の品種、つまり伝統種(heritage chicken)の鶏を使う方法だ。こうした品種は、第2次世界大戦後に養鶏産業が整理統合されると、大規模生産では使用されなくなってしまった。農作物の種子を保存するのと同様に、伝統種の系統はごく少数の頑固な農家によって守られ、数少ない小規模な育種・孵卵場でかろうじて生き残ってきた。これらの品種を使えば、大規模な育種・孵卵業者に左右されない、オープンソースな養鶏が可能になる。
米国カリフォルニア州にあるイートウェル・ファーム。2600羽を超える鶏を飼育している。(写真提供:イートウェル・ファーム)
オンライン・ファンドのキャンペーンビデオで、ヒヨコと共演するウォーカー。(写真提供:イートウェル・ファーム)
 養鶏産業の整理統合が進んだ時代、かつてはひとくくりだった鶏は、肉として食べる鶏(肉用鶏)と卵を採るための鶏(採卵鶏)の2種類にわかれ、それぞれの体は世代が進むごとにかけ離れていった。肉用鶏は、あっという間に筋肉が成長する肉のかたまりのような鳥となったが、若鶏のうちに食肉として処理されるため卵を産むことはできない。
 一方、採卵鶏は、筋肉を発達させるかわりに卵をたくさん産むように品種改良された。当然のことながら、卵を産むのは雌鶏だ。つまり、雄鶏は余計者。採卵鶏を育てて卵を生産しようとすれば、雄のヒナは孵化した途端に殺される運命なのだ(これは卵を使用する食品会社にとっての課題でもある)。ウォーカーも養鶏を営んでいる以上、不本意ながらも毎年数多くの雄のヒナを犠牲にすることに加担していることになる。

雄のヒナを犠牲にせずに

 だが、彼には解決への道筋が見えている。昔ながらの種類の鶏を飼育すればよいのだ。伝統種なら、雌鶏は十分な数の卵を産み、雄鶏の肉付きもかなり良い。彼のねらいは伝統種を飼育するだけに終わらない。保有する鶏を交配し、産卵・孵化させるまでを自身の農場で一貫して行う、元来の繁殖モデルに立ち戻りたいと考えている。
 ウォーカーは、オンライン・ファンドで調達した資金を使って、現在飼育している採卵鶏「プロダクションレッド」を昔ながらの品種「ブラック・オーストラロープ」に変えていくことを計画している。雌鶏は孵化後4~5カ月で産卵できるようになり、その後2年間は卵を産んでくれる。大規模生産の採卵鶏の2倍の期間だ。雄は食肉用として市場に出荷できる大きさまで成長するのに14~16週間かかる。これは大量生産されるブロイラーの2~3倍の時間だ。
 「鶏が長生きすれば、そのぶん餌も余計に必要になります。1950年代、農家が新しい品種に乗り換えたのは、それが理由です。お陰で、鶏肉が食卓に上るまでの時間は短縮されました。当時の農家を責めることはできません。政府が増産と飼育コスト削減を迫ったのですから」とウォーカーは話す。
伝統種との交配で生まれる新しい品種の鶏は、2年間にわたり卵を産む。大規模生産に使われる採卵鶏の2倍の期間だ。(写真提供:イートウェル・ファーム)
 集めた資金は、孵卵場やヒナを育てる育成場を新設するのに使う。雌の種鶏が産んだ卵を自動で集め、計量・記録し、繁殖成功率を監視する装置を完備した巣箱も設置される予定だ。ウォーカーはそのデータを基にしたアプリの開発も計画している。アプリを利用して有望な鶏を素早く見分けられれば、彼の農場だけでなく、自前の鶏の繁殖に挑戦しようとしているほかの農家にも役立つと考えているのだ。

手放したのは50年。必ず取り戻せる

 「常にベストの方法を見極め、選び抜くつもりです。それこそが農業経営のあるべき姿ですから」とウォーカーは話す。「農家の人たちは何百年、何千年もの間、それを営々と受け継いできました。私たちが投げ出してしまったのは、このわずか50年間だけのこと。必ず取り戻せるはずです」

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